2019.12.01
溶連菌にかかったら?(恐怖のピンポン感染も?)
溶連菌は数多くある感染症の中でもちょっと特殊な感染症です。
どのような病気でしょうか?
目次
溶連菌とは?
A群β溶血性連鎖球菌、という菌の略称が溶連菌です。
咽頭炎や扁桃炎を起こしやすい菌で、喉が痛いお子さんの10人に3人は溶連菌とも言われます。
結構よくある疾患です。
溶連菌の症状と特徴
溶連菌にはいくつかの特徴があります。
- 喉がかなり痛い
- 発熱
- くびのリンパ節が腫れる
- 発疹
などの症状があります。
また、
5歳以上になると、溶連菌は通常、咳、鼻はあまりありません。
咳・鼻の症状が少ない
というのも大きな特徴と言えるでしょう。
しかしながら、ちいさい赤ちゃんですと、咳、鼻も出ます。
熱もすこし出ますし、機嫌が悪くて食欲が落ちるでしょう。
他の風邪も同時にひいていると、咳も出ますし、
実際には教科書通りにはいかないことも多いので難しいです。
溶連菌の調べ方
最近は迅速検査というものができて、簡単に調べられるようになりました。
のどを綿棒でこすって、調べます。
溶連菌が陽性だとこんな感じになります。当院での実際の症例です。
溶連菌の治療の目的
溶連菌に感染したら、抗生物質で治療をおこないます。
その理由は:
- 抗生物質が効いて速やかに良くなる
- 早く良くなれば周囲に移さなくて済む
ということと、もう一つ大切なことがあります。それは
- 合併症を予防するため
です。
溶連菌は急性糸球体腎炎やリウマチ熱を起こすことがあります。
なったら厄介ですので、しっかり抗生物質で除菌しちゃいましょう。
溶連菌の治療
抗生物質
まずは抗生物質を指示された通りに飲みましょう。
通常10日間の抗生物質による治療を行います(抗生物質の種類によっては5日間で終了する場合もあります。)
通常、抗生物質がよく効きますので2−3日で良くなってきます。
飲んだり飲まなかったりしてもいけません!
合併症を予防するために最後まで、指示された量を飲み切りましょう。
逆にのんでも良くならない場合には耐性菌の可能性もありますし、別の感染が重なっている(混合感染)ということもあり得ます。
1−2日で改善が見られない場合には再度受診していただきたいと思います。
鎮痛剤
鎮痛剤(アセトアミノフェンやイブプロフェン)を使用します。
18歳以下の子供にアスピリンを含む解熱剤は使わないでください。脳炎・脳症のリスクをあげてしまいます。
うがい
うがいもすると良いです。イソジンでも水でも良いです。
食事・水分
喉が痛いので、飲み込みやすい食事にしましょう。
飴を舐めたり、アイスクリームを食べるのも良いでしょう。
喉が痛いからと行って水分を取らないとこじれてしまうことがあります。
しっかり水分を取るようにしましょう。
あと、喉スプレーは使用しないようにしましょう。
症状も飴を舐めるほども良くなりませんし、アレルギー反応を引き起こすことがあります。
かゆみ止め
発疹が出る子がいて、結構全身痒がることがあります。
抗生剤が効いてくれば引いてきますが、それまでの間しんどい場合には、
抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤などをつかって痒みを抑えます。
溶連菌の再感染
溶連菌感染は終生免疫ができませんので、周囲に溶連菌感染の方がおられると何度もかかることがあります。
溶連菌の型が異なる場合
同じ溶連菌でもタイプが異なると感染します。
治療が不十分だった場合
抗生物質を途中でやめてしまった場合、嫌がって飲めなかった場合、などに起こり得ます。
感染者や保菌者が周囲にいる場合(ピンポン感染)
ピンポン感染て聞かれたことがありますか?
ピンポンて卓球のことですね。
家族や周囲に感染者や保菌者がいる場合、一度抗生物質で治しても、またその人からもらう、ということがあり得ます。
兄弟がいると、うつしあいになり、
卓球(ピンポン)のように、家族間で「何度も溶連菌が行ったり来たりする」
ということが起こり得ます。
そういう場合には、一気に全員治療する、という方法が効果的です。
溶連菌感染が家族に発生した場合には、家族も注意です。
大人でも感染しますので、発熱や喉の痛みなどがある場合には一緒に検査をおすすめします。
溶連菌感染症後の尿検査
溶連菌にかかってしまうと、急性糸球体腎炎を起こすことがあります。
抗生物質をちゃんと飲んでいても起こすこともあります。
そのため、当院では2週間後、1ヶ月後に尿検査をしています。
また、
きっちりと除菌できているのか?
また感染していないか?
(除菌前述のピンポン感染などにより、除菌してもまた感染することもあります)
などの確認を培養検査で行ったりもしています。
学校や幼稚園、保育園にはいつからいけるのか?
溶連菌は学校や園をお休みしなければならない病気です。
厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」によれば
『抗菌薬内服後24〜48時間経過していること。』と記載されています。
抗生物質を飲んでから24-48時間以上経っていて、症状がよくなっていればOKです。
つまり
来院された翌日まではお休み
翌々日から登園・登校可能(ただし抗生物質がしっかり内服できていて、かつ解熱していること)
としています。
溶連菌の予防法
特別な予防法というものはありません。
溶連菌は飛沫感染ですので、咳、鼻などを介してうつります。
溶連菌に咳、鼻はあまり無い症状ですが、それでも咳、鼻や、それらが付着した手やドアのノブ、スマホ、、、、などなどを介してうつります。
これには一般的な感染症予防法である、手洗いが有効です。
またアルコール消毒も有効ですし、同じ食器やタオルを使わないことも大切です。