2020.02.19
当院の舌下免疫療法の診療の流れ
目次
はじめに
花粉症がでてきて舌下免疫療法に興味を持たれる患者さんもおられますね。
花粉症の薬物治療についてはこちら。
薬物治療はその時だけ症状をごまかす治療法ですので、また次のシーズンも同じ症状に悩まされます。
もちろんうまく治療すればコントロールができますので、それですむ方はそれで大丈夫です。
ただ、
- 毎年の薬物治療にうんざりで、体質から改善したい。
- スギ花粉症、ダニアレルギーである。
- 長期の治療でも頑張れる
- 気管支喘息やアトピー性皮膚炎などの他の病気も一緒に治したい
という方は舌下免疫療法を考てみてはいかがでしょう?
こちらはスギ花粉症の治療薬「シダキュア」です。
(鳥居薬品プレスリリースより転載)
舌下免疫療法は体質からアレルギーを改善していく治療法で、治療期間は長いですが、自宅でも続けられる治療で、
治療を中止したあとも、その治療効果が持続するのが魅力です。
なかなか完全にスッキリするように治る!、というほどの効果は得られませんが、程度の差はあるものの楽になる方が多いです。
「少しは改善した」というかたも入れると約8割の方に効果があります。
舌下免疫療法についてはこちら。
では、当院での診療の実際の流れを説明させていただきたいと思います。
初回診察:治療適応があるかどうか問診・診察・検査を行います。
まずはアレルギー性鼻炎や花粉症の診断が正しいかどうか?
を問診や診察で確認していきます。
舌下免疫療法の希望があり、適応がある場合には治療の概要を説明させていただき、アレルギーの検査を行います。
このステップが必要なのは、そもそも治療の適応がないことがあるからです。
まず大前提として、スギやダニにアレルギーがなければ、治療はできません。
今後種類は増えてくるかもしれませんが、2020年2月現在治療できるのはスギ、ダニの2種類だけです。
また、気管支喘息がある場合には、喘息のコントロールがしっかりついていない状況では始められません。
治療により発作を誘発してしまい、悪化させる可能性が十分にあるからです。
気管支喘息が重症な場合には発作が落ち着いていても、クリニックで行うのはリスクが高く、どうしても希望される場合には病院を紹介させていただきます。
アレルギーの検査法にはいろいろ種類はありますが、当院では簡便に行える血液検査をまずは行なっています。
2回目診察:結果説明
血液検査をして1週間後に結果を聞きに来ていただきます。
スギやダニにアレルギーがある場合には、希望があれば治療開始が可能です。
- ここでどれくらいの効果が見込めそうか?
- どれくらいの期間治療が必要なのか?
などのお話をさせていただき、納得いただければ、具体的な治療のお話をさせていただきます。
また、アナフィラキシーなどのリスクなどの説明もさせていただき、同意書をお渡しさせていただきます。
そして次回使用する薬を処方させていただきます。
3回目診察(いよいよ投与試験)
前回処方させていただいた薬を持参いただき、治療の同意書をいただければ、
いよいよ実際にクリニックで投与試験(負荷試験)を行います。
スギもダニも、どちらも大量にアレルギーの原因物質(アレルゲン)を体に投与する治療です。
実際にアレルギーがあって症状がつよくて困っているる人に、そのアレルゲンを入れるのですから、症状は出て当然です。
治療開始のタイミングでアナフィラキシーを起こす可能性もないとは言えません。
アナフィラキシーについてはこちら。
できるだけ平日午前の早い時間の受診をお願いしております。
それほど頻度が高いわけではありませんが、万が一、症状が強く出た場合にはしかるべき処置をしたのちに、病院へ搬送する必要があるためです。平日午前はどこの病院も大体空いていて受け入れてくれます。
とくに初回投与してから30分以内は強い症状が出る可能性がありますので、
実際に薬の投与を指導させていただき、ご自身(ご家族に)投与を行なっていただき、
クリニック内で、症状が出ないかどうか、観察させていただきます。
30分たって問題なければ、帰宅可能です。
帰宅後も症状は出る可能性がありますので、慎重に見守ってあげてくださいね。
翌日から自宅で、ご自身で薬を続けていただきます。
はじめの1ヶ月:週一回診察
初めの1ヶ月は週1回受診をいただきます。
ちょっと多いと感じられるかもしれませんが、これはいろいろトラブルが起きやすいのは最初の1ヶ月だからです。
- きちんと投与できているか?
- 副作用は出ていないか?
- 投与してはいけない時に投与していないか?
などをチェックさせていただきます。
アレルギー症状の原因とわかっているアレルゲンをいれますから、症状が一時的に出ます。
ここを乗り越えられないと、嫌になってやめてしまいます。
定期的に受診いただければ、はやめに不安点を解消したり、副反応が出ていてもはやめに対応できます。
また、最初は少ない量で始めますが、慣れてきたら増量します。
そして増量したら、また症状が出ます。
増量できるタイミングも人により異なりますし、
週1回の受診というのは、面倒に感じられるかもしれませんが、やってみるとそれほど頻回には感じられないと思います。
むしろ受診がないと不安だと思います。
1ヶ月以降は定期診察
最初の1ヶ月を乗り越えられれば、もちろん調子を崩された場合には臨時で受診していただきますが、
定期受診としては月一回の受診で大丈夫です。
あまりトラブルがないからです。
ただ、舌下免疫療法は手軽にできるとはいえ、新しい治療法で、全身に作用する免疫療法です。
鼻の粘膜だけに効いているわけではありません!
定期的に診察をさせていただき、副作用がないか、時には血液検査でのモニターが必要です。
またIgEというアレルギーの数値を追うことで治療効果のフォローもできます。
長期にする治療だからこそ、きめ細やかなフォローが必要と考えています。
特に初めの一年間は何度か採血をさせていただきます。
オンライン診療も可能
舌下免疫療法は治療期間が長い治療です。
流れに乗って、治療に慣れてくると、調子が良くて、病院には薬を取りに来るだけ、というようになるでしょう。
診察して新たなことが発覚することがありますので、原則は対面診察が必要ですが、長い治療期間の中には忙しくて受診できないこともあるでしょう。
そのような時にはオンライン診療でのフォローも可能です。
最低でも3ヶ月に1回は必ず対面診察が必要ですが、それを守っていただければ、可能です。
オンライン診療中心でフォローするのではなく、あくまでどうしても受診できない時に補完的に使っていただける、というイメージです。
自宅にいながら診察を受けていただき、処方箋は自宅へ郵送させていただきます。
未来の治療の一つの形と考えています。
まだいろいろ制約が多いので自由にできるわけではないのですが、
当院でも新しいことに挑戦していきたいですので奈良県の小児科としては初で導入しています。
ただし、これは患者さんによっては許可できないこともあります。治療状況によって異なります。
興味がある場合には相談をいただければと思います。
さいごに
当院での舌下免疫療法の実際の流れを書かせていただきました。
舌下免疫療法をやっているクリニックはたくさんありますが、フォローの仕方には若干の差があると思います。
別のクリニックでされていて当院に来られると、やり方が違うな、と感じられる方もあるかもしれません。
長期の治療のため、相性の良い先生のところで受けていただくのが良いです。
私のやり方をよくご理解いただき、納得の上で治療を受けていただきたいと思います。
それでは!