2019.11.18
最終更新日: 2025年05月09日
【子どものアレルギー性鼻炎・喘息に】舌下免疫療法で根本治療をめざそう!
アレルギー性鼻炎やスギ花粉症、ダニアレルギーがあるお子さんの治療に、いま注目されているのが**「舌下免疫療法」**です。
これは、単に症状を抑える薬とは違い、
アレルギー体質そのものを改善する根本治療。
当院でも多くの患者さんが導入され、良い効果を実感されています。
目次
舌下免疫療法(SLIT)とは?
アレルゲン免疫療法のひとつで、
アレルゲン(アレルギーの原因物質)を少量ずつ体に慣れさせることで、症状を引き起こしにくい体質に変えていく治療法です。
従来は皮下注射で行われていましたが、
通院が大変
注射が痛い
アナフィラキシーのリスクがある(200人に1人)
といったハードルがありました。
それに代わる方法として登場したのが、**「舌下免疫療法(SLIT:Sublingual Immunotherapy)」**です。
5歳から始められ、ご家庭で毎日続けられるのが大きな特長です。
どんな症状に効くの?
現在、日本で保険適応となっているのは以下のアレルギー性鼻炎です:
スギ花粉症
ダニアレルギー

子どもの頃から始めることで、
成長とともにアレルギー体質を改善しやすい
将来の喘息や重症化の予防につながる
といった利点が期待されます。
鼻炎に対する効果はどれくらい?
舌下免疫療法は、アレルギー性鼻炎(スギ花粉症やダニアレルギー)に対して非常に有効とされています。
スギ花粉症の方で約80%、ダニアレルギーの方で約60%が「効果を実感」
うち20%の方は「ほぼ症状がなくなった」
実際の患者さんからは、
「くしゃみや鼻水が激減した」
「毎年の花粉の季節も快適に過ごせた」
「薬を飲まなくても大丈夫になった」
といった声が多く寄せられています。
特にスギ花粉症に対する効果は高く、生活の質(QOL)の改善が期待できる治療法です。
効果が出るまでの目安
通常、3~6か月程度で症状の軽減を実感
1年を過ぎるとさらに改善が進む
治療期間は5年が推奨され、終了後も効果が長く続くことが多い
つまり、舌下免疫療法(SLIT)は:
- 毎年つらい鼻炎に悩んでいる方の約8割が症状の軽減を実感
- 薬に頼らず快適な生活を目指せる
治療法と言えるでしょう。
✅ 舌下免疫療法の主な効果
1. 鼻炎症状の軽減・薬の減量
前述のように、
スギ花粉症の方で約80%、ダニアレルギーの方で約60%の方が「効果を実感」でき、
抗アレルギー薬や点鼻薬を減らせることも多いです。
2. 喘息の発症予防・症状の緩和
ダニやスギによる鼻炎を放っておくと、後に喘息へ進行するリスクが知られています。
舌下免疫療法(SLIT)を行うことで、喘息の発症や増悪を抑える効果が報告されています。
📚 主な研究・出典:
「Effectiveness of Sublingual Immunotherapy in the Treatment of HDM-Sensitized Nasobronchial Allergies」
→ 3年間の舌下免疫療法(SLIT)で、症状スコアの改善、吸入ステロイドの減量、新たなアレルゲン感作の予防効果が認められました。
「Role of sublingual immunotherapy in the treatment of asthma」
→ 舌下免疫療法は、喘息症状のコントロール・FEV1(呼吸機能)の改善・長期管理薬の減量に中〜高程度のエビデンスあり。
「Efficacy of SLIT in Allergic Rhinitis Patients With Asthma」
→ アレルギー性鼻炎に合併する喘息患者で、咳や息苦しさなどの症状が有意に軽減。
3. アトピー性皮膚炎の改善の可能性?
特にダニに対する舌下免疫療法(SLIT)では、アトピー性皮膚炎の重症度や生活の質(QOL)の改善が示唆される報告も出ています。
まだ研究段階ですが、全身に作用する免疫治療の一つとして期待されています。
📚 主な研究・出典:
「Prevention Is Better than Cure: Impact of Allergen Immunotherapy on the Natural Course of Allergic Diseases」
→ ダニSLITにより、アトピー性皮膚炎の重症度や生活の質(QOL)の改善が示唆される報告あり。
→ ただし、かゆみや睡眠の質などの改善については今後の研究が必要とされています。
現在のところ、アトピー性皮膚炎に対するSLITは保険適応外ですが、
軽度〜中等度の症状があるお子さんで、アレルギー性鼻炎を合併しているケースでは、選択肢のひとつとして検討の余地があります。
4. アレルギーの“広がり”の予防
舌下免疫療法のもう一つの魅力は、
「将来的なアレルギーの広がり」を防ぐ可能性があるという点です。
たとえば、今はスギやダニだけに反応しているお子さんが、
やがて花粉・動物・食物などに次々と感作されるのを防げる可能性があります。
📚 主な研究・出典:
「Effectiveness of SLIT in HDM-Sensitized Nasobronchial Allergies」
→ 舌下免疫療法を受けたグループでは、新たなアレルゲン感作の発症が有意に少ない。「Prevention Is Better than Cure(2024)」
→ 乳児期からSLITを導入した研究では、6歳時点での喘息や複数アレルゲン感作の予防効果が期待されると報告。
舌下免疫療法(SLIT)のデメリット
- 全ての人に効くわけではない
- 治療が長期に渡る
- 治療できるアレルゲンがスギとダニに限られる
100%効くわけではない
治療期間が長い
スギとダニのアレルギーしか治療できない
⚠ 舌下免疫療法の副作用について
よく見られる副作用(軽度)
口腔内のかゆみ・腫れ(舌下や唇、喉など):治療開始直後から1か月以内に多く、治療患者の約10%に見られます。
喉や耳のかゆみ、刺激感、不快感
頭痛、吐き気、咳、口内炎など
これらの軽度な副作用は服用後30分以内に起こることが多く、ほとんどは数十分で自然に治まります。
また、1~3か月経過すると気にならなくなることが多いです。
軽度の副作用は全体の15~20%程度に発生するとされています。
重篤な副作用(まれ)
アナフィラキシーショック(急性の重度アレルギー反応):極めて稀ですが、ゼロではありません。日本国内での発生率は0.1%未満で、死亡例の報告はありません。
症状は、蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下、意識障害、全身紅潮、顔面や咽頭の浮腫など。
服用後30分以内に起きることが多いです。
このため、初回投与は院内で行い、経過観察後に帰宅とさせていただいております。
その他の注意点
ダニの舌下免疫療法はスギよりも副作用がやや出やすい傾向があります。
花粉飛散期や体調不良時は副作用が強く出ることがあるため、服用タイミングに注意が必要です。
服用前後2時間は激しい運動やアルコール摂取、入浴を控えることが推奨されています。
副作用まとめ
舌下免疫療法の副作用は「口の中のかゆみや腫れ」などの軽いものが主で、治療開始1か月以内に多くみられます。
重篤な副作用(アナフィラキシー)は極めてまれではありますが、
安全のため、初回投与は必ず院内で行い経過観察後に帰宅とさせていただいております。
📝 まとめ
舌下免疫療法は、「今ある症状を抑えるだけでなく、将来の発症や進行を防ぐ」という予防医学的な価値を持った治療法です。
鼻炎だけでなく、喘息にも良い効果が期待される
新たなアレルギー感作を予防する可能性がある
一方で、すべての人に効くわけではなく、効果には個人差もあります
だからこそ、「どんな症状があるか」「どのアレルゲンに反応しているか」「家庭で続けられるか」など、
しっかり検討してから治療を開始することが大切です。
🏥 当院でも行っています
当院では、初回の診察・導入時の安全確認を行った上で、舌下免疫療法をご家庭で安心して継続できるようサポートしています。
まずは血液検査でアレルゲンを確認
舌下治療のメリット・デメリットを丁寧にご説明
ご希望があればいつでもご相談ください
当院での具体的な進め方についてはこちら!↓↓↓
アレルギー性鼻炎やその合併症(喘息・アトピーなど)でお悩みのお子さんがいるご家庭は、
ぜひ一度、舌下免疫療法についてご検討いただければと思います。
それではご来院お待ちしております!