2020.02.16
最終更新日: 2024年09月18日
どの薬がベスト?アレルギー性鼻炎(花粉症)の治療総論
そろそろスギ花粉症の時期になってきましたね。
くしゃみ・鼻水・鼻詰まりで辛い思いを毎年されている方多いのではないでしょうか?
また、最近は低年齢化でお子さんでも結構 アレルギー性鼻炎・花粉症がみられます。
小児科にもたくさんアレルギー性鼻炎の方が来られます。
症状が耐えられるレベルであれば良いのですが、強い場合には治療が必要になります。
薬をうまく使えば楽になります。
最近は薬が良くなってきたので、ある程度即効性もありますが、やはり一旦症状が出てしまうと押さえ込むのが大変です。
毎年症状が出る人は、症状がひどくなる1-2週間くらい前から治療を開始するのがおすすめです。
どのように治療するのが良いのでしょうか?
目次
大人と違う?小児の花粉症・アレルギー性鼻炎の治療
子どもと大人で治療法や薬の選び方は原則変わりません。
ただし、子どもでは大人と代謝のスピードが異なるため、薬の飲み方が変わったり、
添付文書の適応があるかないかの問題で年齢が低いと使えない薬もあったりします。
また、子どもでは
- 第一世代の抗ヒスタミン薬(ペリアクチン®、アタラックスP®など)
- 第二世代でも眠気の出やすいもの(ザジテン®、セルテクト®など):個人的には第一世代と同等の認識をしています。
は避けるのが良いです。
メインの理由は
・眠たくなる(インペアード・パフォーマンスとよばれ、ボーッとして集中力がなくなり勉強もできません)
・痙攣のリスクがあがる
ですが、他にもいろいろトラブルがあります。
アレルギー性鼻炎に対して第一世代の抗ヒスタミン薬を使う理由は全くありません。
鼻アレルギー診療ガイドライン
(鼻アレルギー診療ガイドライン2016より抜粋)
えらい先生方が作ったガイドラインがありますので、大まかにはこのような流れに沿って治療していきます。
でもこれをみただけではわかりにくいですよね。
当院でよく使う薬についてみていきましょう。
第二世代の抗アレルギー剤
くしゃみ・鼻水の症状が強い場合には第二世代(第三世代と呼ぶこともあります)の抗アレルギー剤を選びましょう。
小児で使いやすいのは以下のあたりです。
- レボセチリジン(ザイザル®:生後6ヶ月以上)
- セチリジン(ジルテック®:生後6ヶ月以上)
- フェキソフェナジン(アレグラ®:生後6ヶ月以上)
- オロパタジン(アレロック®:2歳以上)
- ロラタジン(クラリチン®:3歳以上)
- エピナスチン(アレジオン®:3歳以上)
、、、、などがあります。他にもたくさんあります。
最近はジェネリックも増えて薬剤名がややこしくて大変です。
さて、これら第二世代の抗ヒスタミン薬は副作用(眠気や口が乾くなど)が出にくいです。
(鼻アレルギー診療ガイドライン2016より抜粋)
これは抗ヒスタミン薬の脳への移行を示したものです。やはり第二世代は少ないですね。
脳に移行しにくければ眠気などの副作用が出にくくなります。
第二世代であれば、どれを使っても間違いということはありません。
しかしそれでも効果や、副作用の出方には個人差があります。
使ってみて調子が良いのを探すしかないでしょう。
よく言われるのは眠くなるのは嫌だ、ということです。
自分もそうです。自分は眠くなるならたとえ鼻水が出ようとも使いません。
一般的に眠気が出にくいと言われているのは
- フェキソフェナジン(アレグラ®)
- ロラタジン(クラリチン®)
- デスロラタジン(デザレックス®)
- ビラスチン(ビラノア®)
逆に
- オロパタジン(アレロック®)
- セチリジン(ジルテック®)
などは眠気が強めに出やすいです。
ただ、この辺は相性もあります。
この辺を踏まえながら、かかりつけの先生とベストなものを探すと良いでしょう。
ステロイド点鼻薬
抗アレルギー剤の点鼻もあります。副作用はほとんどなくて良いのですが、
おまじない程度の効果で、しかも頻回に使用しないといけないという不便さもあり、
それでも良い、という希望者のみと考えていますので、当院としてはあまり処方していません。
一方、ステロイド点鼻薬は単独での効果もしっかり証明されています。
点鼻薬(単独)と抗アレルギー剤の飲み薬(単独)と比較した場合でも、点鼻薬(単独)の方が優れていると報告されています。
ステロイドというと怖いイメージがあるかもしれませんが、点鼻は局所投与といって、鼻の粘膜に作用しますが、薬が全身に回るわけではないですので、飲み薬や注射薬とは全く別物と考えていただいて良いです。
ステロイドの副作用として長期的に使用すると成長障害が挙げられます。当院は成長にも力を入れていますので、気になるところです。
実際、点鼻薬程度で身長に影響するのかどうか?若干の報告はあるもののはっきりしません。
また別の記事で取り上げようと思いますが、私はあっても無視できるほどわずかと考えています。
ここで忘れてはいけないのは、アレルギー性鼻炎がひどいと、しんどくて眠りが浅くなり、寝ている間に分泌されるホルモンである「成長ホルモン」が出にくくなると思われます。そう考えると、ステロイド点鼻がたとえわずかに身長に影響するとしても、それで睡眠の質が上がれば、逆に最終身長を改善する可能性もあるわけです。どちらが良いのかはわかりません。
いろいろあるステロイド点鼻はどれも同等の効果とは言われていますが、第2世代と呼ばれる新しい薬の方が、
- 使用回数も少なくて効く
- 局所にとどまり副作用が出にくい
といえます。
これらの理由から、当院ではアラミスト®やナゾネックス®を使用しています。
1日1回で良いので便利です。
血管収縮剤入りの点鼻薬
血管収縮剤入りのステロイド点鼻薬としてコールタイジンスプレー®も処方可能です。
血管収縮剤が入っていると、詰まっている鼻が通ります。一時的にはすごく楽になります。
ただし効果が2−4時間と短く、使いすぎると余計に鼻水が出てまた詰まる、とリバウンドがでますので連用はお勧めできません。
私も副鼻腔炎+アレルギー性鼻炎持ちなのですが、自分では、鼻が詰まったらコールタイジンスプレーで鼻を通してから、すぐに食塩水で鼻うがいします。花粉や鼻水を洗い流しますので、すっきり鼻が通り、かつしばらく症状も治ります。かなり楽になりますよ。
そして鼻がすっきりした後にステロイド点鼻をしています。
市販のパブロン点鼻とかもありますが、血管収縮剤+抗ヒスタミン剤(第一世代)ですね。
写真は自分のパブロン。副鼻腔炎が燃え盛っていた時は大変お世話になりました。
これも使いすぎると余計に鼻水が出てしんどいのと、ステロイドではなく、抗ヒスタミン薬が入っているので眠たくなります。そうはいっても一時的には楽になるし薬局ですぐ購入できるので使っても良いと思いますが、、、
使いすぎないように注意しましょう。
ロイコトリエン受容体拮抗薬
くしゃみにはヒスタミンが、鼻閉にはロイコトリエンが関連していると言われています。
このロイコトリエンをおさえるのがロイコトリエン受容体拮抗薬という種類の薬になります。
鼻詰まりが強い方にはコチラがお勧めと言えるでしょう。
現在2種類の薬が使用可能です。
- プランルカスト(オノン®)
- モンテルカスト(キプレス®、シングレア®)
があります。
違いですが、投与回数と保険上の適応症が異なります。
プランルカストは1日2回の投与が必要です。適応症は気管支喘息、アレルギー性鼻炎です。
モンテルカストは1日1回の投与で良いです。コチラを好む患者さんも多いでしょう。ただし、適応症は小児用のチュアブル錠は気管支喘息のみです。アレルギー性鼻炎ではありません。(成人・15歳以上用の錠剤は気管支喘息、アレルギー性鼻炎の両方適応があります)
これはあくまで保険適応の問題で、医学上の問題とは言い難いですが、我々は保険診療をしていますので、保険のルールには従わなければなりません。
ただ、40%以上のアレルギー性鼻炎の患者さんが喘息も合併しているとも言われています。
アレルギーって一つだけ持っている人って少ないですね。喘息やアトピーを合併している人はたくさんいます。
軽症できちんと診断されていない方も入れれば喘息傾向のある方はかなりおられると思います。
ロイコトリエン受容体拮抗薬はこのような患者さんには特に有効と言えるでしょう。
ロイコトリエン受容体拮抗薬のメリットは
- 眠気がかなり少ない
- 他の抗ヒスタミン薬と作用機序が異なるため、併用が可能
と言えるでしょう。
では、その効果はどの程度のものでしょうか?
モンテルカストで色々データがあります。
●モンテルカスト(単独)で、ロラタジンと同等の効果が複数の研究で認められています。
●モンテルカスト+ロラタジンの併用で、ディレグラ(後述)と同等の効果がみとめられています。
●ステロイド点鼻 VS モンテルカスト+抗ヒスタミン薬(併用)との比較は甲乙つけがたい印象です。
それだけステロイド点鼻の効果が強いのがよくわかります。
ディレグラ®
ディレグラは他とは少し違った薬です。
成分は「フェキソフェナジン」と「プソイドエフェドリン」となっています。
「フェキソフェナジン」はアレグラ®のことですね。
「プソイドエフェドリン」は血管収縮作用を持つ薬で、鼻の粘膜の充血を抑えて、鼻詰まりを改善する効果があります。
(pseudo-ephedrineと書くので「シュード」と発音すると思うのですが、プソイド、と記載されています。)
ただし副作用がいろいろあり注意が必要です。
- 高血圧
- 不眠
- イライラする
- 頭痛
などがあります。
このような副作用のため、小児科ではあまりありませんが、以下のような方には使えない薬剤です。
・糖尿病 ・高血圧
・虚血性心疾患 ・眼圧上昇
・甲状腺機能亢進症 ・前立腺肥大
・腎機能障害
添付文書にも次のように書かれています。
- 本剤の使用は鼻閉症状が強い期間のみの最小限の期間にとどめ、鼻閉症状の緩解がみられた場合には、速やかに抗ヒスタミン剤単独療法等への切り替えを考慮すること。
- 本剤を2週間を超えて投与したときの有効性及び安全性は検討されていない。
- 本剤の使用により効果が認められない場合には、漫然と長期にわたり投与しないように注意すること。
12歳以上で、かつ上記のような縛りがあり、使う場面は限定されるかと思いますが、なかなか他の薬でコントロールがつかず、ディレグラにしてようやくマシになったという患者さんも実際にはおられます。
うまく使うと頼りになる薬ですね。
さて、このようなアレルギー性鼻炎の薬、どのように使い分けましょうか?
3つのパターンに分けてみました。
症状が特定の場所でしか出ない場合
いつも症状が出るのではなく、特定の場所で出るということもありますよね。
たとえば
・おばあちゃんの家に行ったらくしゃみでる
・スキーに行ったらいつも鼻水がとまらない
とかですね。
このような場合には第二世代の抗アレルギー剤を、症状の出る場所に行く2-5時間前から飲み始めます。
ロイコトリエン受容体拮抗薬(キプレス®、シングレア®、オノン®)も効果がある人は使用しても良いでしょう。
ステロイドの点鼻薬も効果が高いです。
ただし即効性がないので、症状の出る最低2日前から使うのがお勧めです。
症状が軽い場合
症状が軽い場合には、まずは
- 第二世代の抗アレルギー剤 (鼻水・くしゃみ)
- ロイコトリエン受容体拮抗薬 (鼻詰まり)
のどちらかで開始しましょう。
当院では年齢が低くても使いやすいザイザル、アレグラ、アレジオン、オノンなどをよく処方しています。
また、喘息やその傾向があるのならロイコトリエン受容体拮抗薬がお勧めです。
一剤でダメなら両方を併用してみてもよいでしょう。
症状が強い場合
例年抗アレルギー剤を飲んでいても症状が強くて辛い場合には、ステロイド点鼻をしっかりするのがお勧めです。
そして、抗アレルギー剤は無効ではないはずです。症状が強くて抑え切れていないのでしょう。
昨年飲んで効かなかった、と決めつけず、症状が出る前から、早めに飲み始めましょう。
飲んだことがない薬があるなら、試しに飲んでみて合うものを探すと良いでしょう。
抗アレルギー剤+ステロイド点鼻と併用すると良いです。
よくかかりつけの先生と相談してください。
盲点?抗アレルギー剤の内服の仕方
抗アレルギー剤を飲む時間にも注意しましょう。
あまり細かく指定すると服用するのも億劫になってしまうため、一般的な服用指示をすることも多いですが、薬の効きが不十分な場合には検討する価値があります。
アレグラ
たとえばアレグラは「食前」が良いです。
(アレグラのインタビューフォームより抜粋)
食後(高脂肪食)と空腹時を比較したところ、食後では15%程度の血中濃度の低下が見られます。
添付文書にも記載がなく、食前でも食後でも良いことになっています。
実際に血中濃度の差がどこまで効果に関わってくるかまでは検討されていませんが、食後に服用されていて効きが弱い場合には是非一度「食前」を試してみてください。
また
ジュースで内服するとかなり吸収が落ちるようです。必ず水で服用しましょう。
これは他の抗アレルギー剤でも同様のことが起こっている可能性もあり、できるだけ水で飲むようにしましょう。
クラリチン
次はロラタジン(クラリチン)です。
(クラリチンのインタビューフォームより抜粋)
空腹時と食後で血中濃度を比較したデータです。
食後の方が血中濃度が高いですね。
クラリチンは「食後」に飲む必要があります。アレグラと逆ですね。
アレロック
アレロックはどうでしょう?
(アレロックのインタビューフォームより抜粋)
これは見た感じほとんど一緒ですね。
よく見ると若干空腹時のほうが良いみたいですが、あまり気にするほどのことはなさそうですね。
アレロックは食前食後を気にする必要はなさそうです。
アレジオン
アレジオンはどうでしょう。
(アレジオンのインタビューフォームより抜粋)
空腹時のほうが、食後よりも血中濃度上がっています。
食物アレルギーとかで症状がある時に飲む時は、嘔吐した後とかですからちょうど良いですね。
アレルギー性鼻炎では毎日飲むわけですし、1日1回の薬です。
夕食後ではなく、寝る前にのむ、というので良いでしょう。
ザイザル
これは同様のザイザルのデータです。
(ザイザルのインタビューフォームより抜粋)
空腹時のほうが食後よりも濃度の立ち上がりは早いですね。
ただ、その後はぴったり食前と食後は同じカーブとなります。
そしてインタビューフォーム内では「食前でも食後でも大差ない」というような解説がされています。
そこそこ差があるように見えますが、実際の症状をおさえるかどうか?となると、このくらいの差では効果に大差はないということなのでしょう。
ザイザルは、、、、急いで効かせたい時は「食前」って感じでしょうか。
薬剤によってベストなタイミングが異なるわけです。
注意しましょう。
アレルギー性鼻炎の漢方薬治療
上記のような治療で反応しない場合には漢方薬による治療も可能です。
西洋薬とは異なる治療薬のため、併用も可能です。
当院は小青竜湯を中心に処方しています。
小青竜湯は国内の臨床試験ですが、通年性鼻アレルギーに対して有効性も示されているエビデンスのある漢方薬です。
(馬場ら。小青竜湯の通年性鼻アレルギーに対する効果 -二重 盲検比較試験- . 耳鼻咽喉科臨床 1995; 88: 389-405.)
自分も時々使っていますが、結構楽になります。
ただ、ずっと使うと胃が痛くなったりしますので、胃腸が弱い方は長期には飲まないほうが良いです。
鼻汁がひどい時に限定して使うと良いでしょう。
胃腸が弱く小青竜湯が合わない場合には他の選択肢もあります。
是非ご相談ください。
抗IgE抗体製剤!オマリズマブ(ゾレア®)がアレルギー性鼻炎でも使用可能に
喘息や蕁麻疹の治療薬であるゾレアが、新たに季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)に対しても適応となりました。
ゾレアについては企業のホームページが詳しいのでコチラをごらんください。
高額ですし、注射薬ですので、他の治療を行なってもどうしても辛い症状が取れない場合に選択肢になってきます。
以前はどうしても治らない場合にはステロイドの内服や注射などをしている施設もありました。
しかしステロイドの全身投与は副作用も多いですから、点鼻とは異なり、できるだけ避ける必要があります。
ステロイドを使わないといけないくらいなら、ゾレアは試してみる価値のある治療でしょう。
さいごに
いかがでしたか?
今回はアレルギー性鼻炎の薬物治療について書きました。
しかし、薬物治療だけでなく、
- アレルゲンごとに避ける対策をたてる
- 鼻うがい
- マスク
などなど、いろいろする必要があるでしょう。
原因をきっちり確かめるためにアレルギー検査はされたことがない方は、一度しておくと良いでしょう。
- スギ花粉だと思っていたら違った、とか、
- スギ花粉だけかと思ったら他の雑草や、ダニにもアレルギーがあった、
などはよくあることです。
毎年アレルギー性鼻炎でしんどいなら、舌下免疫療法と言って、体質を改善する治療もあります。
当院でも行なっていますので是非ご相談ください。