2019.11.06
当院の低身長外来の流れ
今日は好評いただいている低身長外来についてです。
身長が低くて悩んでいるお子さんは多いですね。
体質で背が低いということがほとんどですが、一方で何らかの病気が原因で低身長になっているというケースもあります。
当院では総合的な成長障害外来を専門外来の一つとして行っております。
病気のくわしい説明は省いて、当院での低身長診療の具体的な流れを書かせていただきたいと思います。
まずは診察
診察が一番大切です。低身長というと「成長ホルモン治療」に興味を持ってきていただく方がほとんどです。
でも成長ホルモンが足りないことで身長が伸びない「成長ホルモン分泌不全性低身長症」は、
成長障害のほんの一部でしかありません。
問診や診察でまずはいろんな病気がかくれていないか?を聞き出していきます。
血液検査・尿検査で低身長の原因を調べます
一般的な診察に加えて、血液検査、尿検査で、病気の可能性を否定していきます。
とくに甲状腺ホルモンは成長に大切なホルモンです。必ず測定します。
栄養状態の評価も大切です。
もちろん成長ホルモンも測定します、、、、と言いたいところですが、
成長ホルモンは日内変動が激しいホルモンで、一回の検査で「出ている」とか「出ていない」という判定はできません。そこで、間接的に成長ホルモンを推測できるソマトメジンCという物質を測定します。
ソマトメジンCはIGF-Iともよばれ、成長ホルモンが肝臓や軟骨に働いて合成されます。成長ホルモンが正常に分泌されていないとIGF-Iが低値になります。
これが成長ホルモンが出ているかどうかの、ある程度の目安になります。
骨年齢で体の年齢を評価!
実際の年齢と骨の年齢は異なります。
骨の年齢が若ければ、まだ伸びる可能性を秘めています。
逆に、骨が成熟していれば、伸びしろは少なくなります。
左手のレントゲンを撮ることで、骨の年齢を測定します。
(ノボノルディスクファーマのホームページより画像転載)
たとえば実際の年齢は12歳だけれども、骨の年齢が10歳、ということもあります。
それならば2年分伸びる余地が余分に残されているわけです。
この辺りまでは、低身長で相談に来られるかたの多くに行います。
↓
↓
↓
さらに、ここまでの検査で成長ホルモンの分泌不全が疑われる場合には次の検査に進みます。
↓
↓
↓
頭部MRI
成長ホルモンを分泌するのは脳の中にある下垂体という臓器です。
ここに腫瘍などの病気がある場合には、それが原因でホルモンが出ないわけですから対策が異なってきます。
頭部MRIを撮ることで、そのような病気を否定します。
何らかの病気が見つかれば、専門病院へ、さらなる検査や治療を受けていただくために紹介させていただきます。
当院の場合には、当院でMRIはありませんが、
学研奈良登美ヶ丘駅すぐ目の前のリコラスという建物のクリニックモール内にある「登美ヶ丘画像診断クリニック」さんにお願いしてMRIを撮ってきていただいております。
技術の進歩が目覚ましいMRIの読影には高度な経験と知識が要求されますが、こちらでは画像を撮るだけでなく、放射線科専門の先生に読影までしていただけますので、とても安心です。
(登美ヶ丘画像診断クリニックHPより画像転載)
MRIは安全な検査ですが、
- 検査時間が長い
- 検査中に大きな音が鳴る
- 狭い空間で行う
というデメリットがあり、じっとできない小さなお子さんには難しい検査です。
難しい場合には、鎮静(眠り薬の飲み薬や注射)をかける必要がありますが、
小児の鎮静は実はそう簡単ではありません。人手もかかりますし、また呼吸抑制のリスクがあります。
クリニックではできません。
その際には対応してもらえる病院を紹介させていただきます。
成長ホルモン分泌負荷試験
成長ホルモンは日内変動が激しいホルモンです。
寝る子はよく育つと言いますが、夜にたくさん分泌されるホルモンです。しかし夜間でもたくさん出ている時とそうでもない時との差が大きいです。
たとえば、一度測定して数値が低くても、それはたまたま低い時間に採血しただけかもしれません。それだけで、成長ホルモンが出ていない、と判定することはできません。
そこで、成長ホルモンを刺激する薬を飲んだり注射して、その後ホルモンがそれに反応して分泌されるかを見る試験を行います。これを成長ホルモン分泌負荷試験と呼びます。
当院でも外来で行っています。入院せずにできますので、是非ご検討ください。
投与前、投与後30分、60分、90分、120分、と採血をしないといけないですので、ちょっと大変な検査です。
毎回採血しても良いのですが、当院ではできるだけ負担を減らすために柔らかい針を留置して、
そこから何度も採血をします。うまくいけば針は一回さすだけで終了です。
ただし、子供さんの血管が細い場合には、なんども採血をしていると、血液が出てこなくなったり、チューブや針が詰まったりして、採血できなくなることもあります。そのときは残念ですが、別の場所に針を再度刺して採血をする必要があります。
当院では年長さんくらいから対応しています。それより小さいお子さんや暴れるお子さんはMRIも撮れなかったりしますし、採血も難しいですので、専門病院で入院していただき、集中的に検査をしてもらうのがオススメです。
まずは2種類の薬をつかって負荷試験を行います。まずは月一回くらいのペースで2回行います。
検査結果を見て必要ならば3種類目の薬も試します。
成長ホルモン分泌負荷試験終了→その後は?
ここまでで検査は終了です。
その結果、
- 成長ホルモンが出ている場合
低身長の原因は成長ホルモン不足ではありません。成長ホルモン治療の対象にはなりません。
このような場合には、一般的な成長に役立つ食事や生活習慣などのお話をさせていただきます。
自費でも打ちたいという方もおられます(最近よく質問をいただきます)が、成長ホルモンは十分足りているところに追加で補充してもどれだけ効果があるか?は、まだまだコンセンサスを得られたものはありません。有効である保証はなく、逆に副作用が出る可能性もあります。保険診療の適応とはなりませんので、かなり高額な治療費もかかりますし、万が一副作用が発生してもその時に国の救済制度の対象にもなりません。小児内分泌学会も推奨していない治療ですので、一般的ではありません。私も推奨はしていません。内容につき詳しく聞きたい方はどのようなものか、受診していただければ説明はさせていただきます。
- 成長ホルモンが足りない場合
成長ホルモンが足りないのが低身長の原因なのであれば、成長ホルモンを補充すれば身長は改善します。
成長ホルモン注射(毎日自宅で注射していただきます。)を行うことで、身長を伸ばしていきます!
しっかり注射法やその後のフォローもさせていただきます。
さいごに
いかがでしたか?
みんなが成長ホルモン治療をして身長が伸びるわけではありません。
しかし、成長ホルモンが足りない場合には、補ってあげれば伸ばしてあげることができます。
身長が低くて不安な場合には、ぜひご相談ください。
来院される場合、
- 測定日(年月日まであることが望ましい)、身長、体重の記録
- 母子手帳
- 保育所、幼稚園、学校での成長の記録
- 両親や兄弟の身長、体重
をお持ちください。身長体重曲線を作成するのに必要です。
また母子手帳は生まれた時の状況を確認する重要な書類です。忘れずにお持ちください。
また、当院ホームページから成長曲線がダウンロードできるようにしております。
できればこちらを事前にプリントアウトしていただき、これまでの身長、体重をできるだけこまかく記入してきていただきたいと思います。これにより待ち時間短縮になり、すぐに診察に入れます。
ご協力お願いいたします。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました